オリンピック、世界陸上、駅伝、サッカーなどテレビでスポーツ選手が華麗にプレーをしていると、うらやましいなぁと思いませんか?
私は、スポーツ全般、からっきしダメで、もっぱら見たり応援専門の人間です。
ちょうど仕事柄、中学生を対象にしたお薬教室で、貧血をテーマに学生に話したところ、結構な学生が、スポーツ貧血の症状があるかも?!という状況でした。
中学生という成長過程にある体、しっかりと学業も部活動も頑張って、青春満喫して欲しい!
と、おばさん根性のような意識が芽生えて、中学校の陸上部でのアドバイザーみたいなものを数年間やっておりました。
そこでの体験などを紹介しながら、スポーツ貧血の症状などについて詳しくお伝えします。
目次
スポーツ貧血の原因と症状
スポーツが原因で起こる貧血は、「スポーツ貧血」と呼ばれることがあります。
スポーツ貧血の説明の前に、簡単に貧血について学びましょう。
貧血とは、”血液中の赤血球の数が少ない状態“や”赤血球中のヘモグロビンが少ない状態“をいいます。
貧血の原因には、主に次の5つが関連します。
- 鉄欠乏性貧血:造血成分の不足
- 再生不良性貧血:骨髄の造血機能の低下
- 溶血性貧血:赤血球の寿命が短くなる
- 外傷や内臓からの出血
- 月経過多
この中で、スポーツ貧血の原因は、9割がた”鉄欠乏性貧血”です。
スポーツ貧血は、スポーツ選手だけでなく、小学校高学年から18歳くらいまでの思春期に激しいスポーツをしている人に多いといわれています。
この時期は、体が急激に成長する時期であり、血液をつくるための栄養分の需要と供給のバランスが崩れるとされています。
次に、スポーツ貧血の原因と症状について、個別に詳しくお伝えします。
スポーツ貧血の原因
スポーツ貧血の原因は、過度なスポーツトレーニングによって、鉄分の消費が多く、食事などからの供給が不足する場合に発症します。
具体的には、次の4つがあります。
- 大量の発汗
- 溶血性貧血
- 血便や血尿
- 筋肉損傷の修復
汗を大量にかくと、汗と一緒に鉄分が排泄される
運動中に足底を頻回に打ち付けることにより毛細血管内の赤血球が破壊される
激しい運動により身体に強い負担がかかり出血する
ハードなトレーニングによる筋肉損傷は鉄、タンパク質のほか、赤血球の生成にビタミンB12、葉酸、銅、亜鉛などを必要とする
スポーツ選手は、発汗することが多いため、男性も女性も貧血になりやすいといわれています。
特に、陸上競技のマラソンなど、長時間硬い地面の上を走る衝撃は、大量の発汗に加え、溶血性貧血の原因にもなります。
さらに、女性の場合は、定期的に月経が起こるため、スポーツ貧血は、女性のスポーツ選手では、特に注意が必要とされています。
スポーツ貧血の症状
スポーツ貧血の症状は、次の6つがあげられます。
- すぐに息が切れる(酸素量を満たすために、心臓は拍動を速め、大量の血液を循環させようとする)
- 疲れやすい
- 頭痛がする
- 顔色が悪い
- 食欲がなくなる
- 微熱が続く
これらの中でも、息切れや疲れやすいといった症状が、スポーツ貧血を疑う初期症状としてみられます。
私も、陸上部のアドバイザーをしていたときに、息切れや疲れやすいという症状を訴える方が多かったです。この訴えをスポーツ貧血の可能性があると、指導者の方がわからなければ、体力不足や気持ちが弱っているなどの誤った判断をしてしまうことがあります。
そこで、さらなるトレーニングの実施などで、スポーツ貧血の悪化をきたし、運動成績の悪化となり、悪循環に陥ってしまう場合もあります。
汗をかくだけで、鉄分も体から失われるということを十分に認識して、夏などの暑い時期は、スポーツ貧血の発症も疑う必要があります。
中学生や高校生などの時期は、大きな病気をしない限り、血液検査などを受ける機会も少ないため、スポーツ貧血の発見が遅くなってしまうのも事実です。
指導者や家族は、お子様の体調などをよく観察して、スポーツ貧血の症状の有無を見極めてあげてくださいね。
さて、スポーツ選手と貧血は、かなり密接な関係であることがわかりました。
さらに、貧血はゆっくりと進んでいくので、自覚症状が出たときは、かなり貧血が進んでいるという場合もあります。
スポーツ貧血になってしまうと、疲れやすいなどの症状から、運動成績にも影響してきますので、普段から貧血にならないように予防することが大切です。
そこで、次の項では、スポーツ貧血の予防法を具体的にお伝えしていきます。
スポーツ貧血の予防
スポーツ貧血を予防・改善するための、1日あたりの食事摂取量などについて具体的に説明します。
1日あたりの食事摂取量は、次の3つです。
- タンパク質:体重1Kgあたり2g
- 鉄:25~30mg
- ビタミンC:150~250mg
貧血は、体の中の鉄分が不足することで発症するため、食事で鉄分を補給する必要があります。
しかし、鉄分は、単体ではとっても体に吸収されにくいため、タンパク質から上手に摂取することがおすすめです。
体重50Kgの方は、100gのタンパク質を1日の中で摂取する必要があります。
100gのタンパク質の量は、食べる食材にもよりますが、おおよそ、片手で軽くにぎりながら持てる量くらいです。(手のひらよりやや多く、少しにぎる程度)
高タンパクな食材ならば、少ない量でOKですし、低タンパクの食材なら、多めに摂取しなくてはなりません。
また、鉄分は、ビタミンCと一緒に摂取することで、体に吸収されやすくなるため、上手に組み合わせて摂取しましょう。
以上を踏まえると、スポーツ貧血におすすめの食材は、“小松菜”と“ほうれん草”です。
鉄分だけならば、豚レバーなどの方がたくさん含まれていますが、鉄分が体に吸収されるためには、ビタミンCも必要です。小松菜やほうれん草には、鉄分とビタミンCが豊富です。
小松菜とほうれん草に、鶏ささみや豚肉、魚介類、卵などを組み合わせて、タンパク質を補うだけで、バランスの取れた食事になります。
まとめ
スポーツをして汗をかくだけで、貧血になるなんて、驚きですよね。
青春の汗を流せば流すほど、貧血がすすんでしまうなんてこともあります。
特に、中学生、高校生の女の子は、運動部で活動してきても、体重の増減を気にしたりして、自宅のご飯を少な目にするなんてことをやってしまう子もいます。
こんなことをしてしまっては、貧血が進んでしまうばかりです。
かといって、食べなさい!という話も難しいですよね。
そこで、私は、夕飯に高タンパクの食事を出してもらい、ご飯はいつもの半分程度に抑えること提案してみました。もちろん、食事療法に加えて、病院で処方してもらった鉄剤も飲みました。
その結果、体が疲れにくくなり、運動成績もやや向上、何より疲れにくいため、帰宅後に宿題や夕飯もしっかりと食べることができるようになりました。
スポーツ貧血は、ちょっとしたボタンの掛け違えで起こってしまいます。中々それに気が付くこともできにくいのが現状です。
たくさん青春の汗をかいているならば、ぜひ、高タンパクの食事やサプリメントなどを上手に使って、スポーツ貧血を予防してくださいね。