よくCMなどで目にするジェネリック医薬品って、費用が安いというイメージありますよね。
ジェネリック医薬品って、どんなふうに発売されるか知っていますか?
実は、ジェネリック医薬品が販売されるのには、医薬品の特許が深く関わっているんです。
医薬品の特許は、製薬メーカーが新しい物質を発見して、病気を治せそうだなとなると、特許申請を行います。
この特許には、色々な種類があり、一定の期間があります。
ここでは、ジェネリック医薬品と特許の関係について、特許の種類や期間などを詳しくお伝えしていきます。
目次
ジェネリック医薬品と特許の関係
最初に、ジェネリック医薬品と特許の関係について説明していきます。
ジェネリック医薬品は、医薬品の特許が切れてから発売されます。
医薬品の開発は、新しい物質が見つかったという段階で、特許申請をします。そのあと、発見した物質が、人や動物などの薬となりうるかを研究に研究を重ねて、1つの医薬品ができあがります。
医薬品の特許の期間は、一般的に20年といわれています。
長いな~と思う方もいらっしゃると思いますが、これは、薬になるかもわからない物質を発見したときから20年です。
多くの製薬メーカーは、平均15年くらいかけて、物質を医薬品にして、残りの5年間、医薬品の市場を独占するという状態です。特許が切れた後の医薬品は、同じ成分や製法の薬を他の製薬メーカーが作ることができるようになり、これがジェネリック医薬品です。
当然、医薬品としての効果などは、すでに証明されているため、ジェネリック医薬品の製薬メーカーは、すぐに薬として販売することができます。そのため、研究開発などの費用が抑えられるため、ジェネリック医薬品の価格が安いということにつながります。
つまり、ジェネリック医薬品は、医薬品を開発した製薬メーカーの取得した特許がきれてからでないと作られないということになります。
また、ジェネリック医薬品を作る製薬メーカーも、企業利益が必要であるため、やたらめったら、ジェネリック医薬品を作るという訳でもありません。
開発した製薬メーカーの医薬品が、どのくらい患者さんのニーズがあるのかを見極めて、ジェネリック医薬品にしています。
簡単にいえば、高血圧などの慢性疾患は、患者さんも多いですし、一度病気を発症すると長く薬を飲むことが多いため、ジェネリック医薬品が開発されやすいです。
しかし、国内に数十人しかいない、希少疾患の場合は、ジェネリック医薬品が販売されることが少ないといわれています。
ジェネリック医薬品は、安いから悪いというものではなく、きちんと医薬品として認められた、特許のきれたものを色々な製薬メーカーが販売しているのです。
さて、特許と一言でいっても、医薬品の場合は、色々な種類の特許があります。
ジェネリック医薬品と深いかかわりのある特許は、大きく4種類ありますので、次の項で詳しく紹介していきます。
医薬品の特許は、製薬メーカーの戦略が詰まってる!?
医薬品の特許について、主に次の4つがあります。
- 物質特許
- 用途特許
- 製剤特許
- 製法特許
それぞれの特許のイメージ図は、下のようになり、特許の詳細について個々に説明していきます。
物質特許
物質特許とは、医薬品となる元の物質に関する特許です。
医薬品の元の物質は、色々な元素の化学式で表されています。
この化学式の集まりが、医薬品の成分となるため、医薬品開発の中で最も大切な特許の一つです。
物質特許を取得後に、新しい物質が医薬品として販売されると、新薬として、世界中から注目され、それを独占的に販売できることになります。
用途特許
用途特許とは、開発した医薬品をどのような病気に使うのかを特定した特許になります。
国が医薬品として承認する際に、”A薬は、胃潰瘍に使うこと“という疾患を明記しなくてはなりません。
もちろん、医薬品の開発段階で、胃潰瘍に効果があることが証明されていますので、製薬メーカーも承認を受ける際に、胃潰瘍として特許を申請します。
しかし、まれに、胃潰瘍に使っていたA薬が、実は、胃がんにも効果があるという報告がたくさん集まることもあります。
医薬品は、常に医療の現場で、どのくらいの患者さんの病気を治したか、というデータが収集されているため、異なる病気に効果があるという報告も出てくることがあるためです。
このように新しい用途に対して、再度、特許申請をすることができます。
この用途特許は、ジェネリック医薬品が出てくると混乱する原因の一つでもあります。
具体的な例で説明すると、
- 胃潰瘍では、用途特許20年が経過してジェネリック医薬品が存在する
- 胃がんでは、用途特許が、まだ10年残っている
このような状態になると、ジェネリック医薬品は、胃潰瘍にしか使うことができないのです。
同じ成分なので、胃がんにも効果がある可能性は十分あるのですが、用途特許が残っている場合は、ジェネリック医薬品を胃がんに使うことができないのです。
“中身は同じなんだから、黙ってジェネリック医薬品を使っちゃえばいいのに!”と思う方もいらっしゃると思いますが、使ってしまうと、保険診療ができなくなってしまうことがあります。
一般的に、医薬品の多くは、国が認めた用途で使うならば、保険診療を認めましょう!という約束で成り立っているため、当然、認められない用途で用いるならば、保険はNGといわれても文句がいえないのです。
この状況、結構、医療現場でよくあります。
薬剤師は、患者さんとの会話から、用途特許がおかしい薬が医師から処方されていると感じたら、医師に確認して、修正するなんてこともやってるんですね。
製剤特許
製剤特許とは、医薬品を製剤にするときに関連する特許です。
最初は錠剤で承認を受けた後、カプセル剤を開発したとなれば、カプセル剤に、再度、特許を取得できます。
最近、水なしでも飲める、ラムネのような製剤の薬が、色々な病気で開発されています。最初は普通の錠剤で開発していたけれども、患者さんのニーズが、水なしで飲めることだったので、ラムネの製剤を開発しました。なんてことも医療現場ではよくあります。
製法特許
製法特許とは、医薬品を構成する添加物などに対する特許です。
簡単なイメージでは、医薬品の成分を薬にするのに、AとBとCを混ぜ合わせて作るというレシピに特許があります。
これも、特許申請を受けた時から、製法を変更したとなれば、再度、特許申請を受けることができます。
まとめ
ここでは、ジェネリック医薬品と特許期間の関係について詳しく説明してきました。
一般的に特許は、20年間が、医薬品を開発した製薬メーカーが独占販売できる期間になります。
この特許がきれた後、ジェネリック医薬品が販売されることになります。
しかし、ジェネリック医薬品が販売されるまでには、次の4つの特許をクリアしなくてはなりません。
- 物質特許
- 用途特許
- 製剤特許
- 製法特許
特に、物質特許と用途特許をクリアしていなければ、ジェネリック医薬品として、患者さんに保険診療で使うことができません。
また、製剤特許や製法特許は、ジェネリック医薬品を作る製薬メーカーで独自の方法を取ることもあるため、この違いが、元々の医薬品との違いや個性として現れてくることもあります。
CMなどで、”飲みやすさを追求した”などのキャッチフレーズは、製剤や製法をジェネリック医薬品の製薬メーカーがオリジナルで作成している個性の一つです。
ジェネリック医薬品と聞くと、何となく”安物でしょ!?”といったイメージが先行しますが、販売されるまでには、特許が切れたものやオリジナルの工夫をしています。
患者さんの中には、ジェネリック医薬品の方が、使いやすいなんて声もあったりするので、自分の生活に適したジェネリック医薬品を見つけてみるのも一つですね。